セレンディピティ・熱レンズ効果・色収差

 25日(土)に開催される第4回工学体験ラボ(T lab)で、てんてこまいです。いえむしろ、慣れないことに直面して緊張してムダにじたばたしているのでしょう。うう。とにかく、土曜日お会いする皆さま、よろしくお願いします。そんなこんなで、長いこと新しいキーワードを作っていなかったな〜ということも頭の隅にあり、プレッシャーが……。というわけで、かつて自分が関わっていた研究テーマに関するキーワードをふたつ作ってみました。熱レンズ効果と、色収差と。特に後者は自信ないので*1、ヘンだと思われたら修正お願いいたします。
 私は応用化学科の澤田嗣郎名誉教授の研究室にいたあと、博士課程に移る段階で担当教官だった北森武彦教授北森研究室を立ち上げられたので、そちらに移りました。そこで、熱レンズ顕微鏡に関係する研究に関わっていました(一応……)。

 この熱レンズ顕微鏡開発に至るストーリーは、まさに広い意味での「セレンディピティ」と呼んでいいくらいの面白い話です。日立製作所から東大に移られたばかりの若き北森先生が、お金がないからと医学部が捨てた50年もののふる〜い顕微鏡を拾ってきました。拾ってきた顕微鏡だから、どうせ壊れてもいいや、とその顕微鏡に2色のレーザーをどーんと入れて実験していたところ、なぜか予想以上に強い信号が得られたとのこと。理由としては熱レンズ効果が思い当たるのだけど、これは2色のレーザーの焦点に差がないと検出できないはず。まさか50年物の顕微鏡でも色収差は補正してあるだろう、と思い込んでいたら……これが、補正されていなかったんですよね。しかも、その熱レンズ効果を測定するのに最適な焦点のズレとほぼ近いズレになっていたというすごさ。残り物ならぬ拾い物には福がある、と。私がここの広報に正式就任したときに恩師である北森先生にご挨拶と一緒に「今度ぜひ取材させてください」とメールを送ったところ「遊びに来るのは歓迎。取材は拒否。」と。うーん。でも勝手にブログに書くのはお許しくださいな。

 ところで、先日小宮山宏総長著の東大のこと、教えます―総長自ら語る!教育、経営、日本の未来…「課題解決一問一答」を読んでいたら

化学チップの分野で文句なく世界一の一人なのが北森武彦教授である。

と書かれていて、椅子から落ちそうになりました。でも確かに、北森先生はほんとにすごくて、しかもネタ満載の面白い先生です。


 

*1:仮にも自分が関わっていた研究テーマで自信がないというのはどうかと思いますよ。ほんとに。