中尾政之教授の本が1位に・失敗の下位概念と上位概念

 いま、紀伊国屋書店BookWebを見たら、産業機械工学の中尾政之教授の著書失敗の予防学―人は、なぜ“同じ間違い”を繰り返すのかが「和書デイリーベスト10」で1位になっていました! きゃー、発売直後ですごいです!←私が興奮してどうする。

 中尾先生のご紹介は先日のエントリーでも書いた通りです。あれを書いたあとに、第4回社会技術シンポジウム「安全・品質のための社会技術」で中尾先生の講演を伺ったのですがなかなか興味深いお話でありました。

 失敗の「下位概念」から「上位概念」を学ぶことができるか、という内容も。例えば、雨の日に鉄板の上でタイヤが滑ってしまったことを経験したことがある人が「濡れた面ではゴムでも滑る」上位概念がわかれば、雪道の自転車でも気をつけるだろうし、温泉で歩くときにも気をつけることができるでしょう。でも、自転車が雨の日に鉄板上で滑ったことを理解(または経験)したことがある人でも、上位概念を抽出することができなければ「ビーチサンダルを履いて駅前の濡れたタイル上で滑って転ぶ」と*1
 この講演を伺いながら「ああ、私はまさに上位概念の抽出できない女……。しかも、同じ失敗をくり返しそうだ」と耳が痛くなりました。とほほ。

 そして、中尾先生はゲームを作って各人のその上位概念抽出能力を調べています。そのゲームはバージョンアップしているのですが、そのゲームのネーミングにウケてしまいました。「キミツタンケン」→「コウジョウチョウ(現場責任者用だから)」→「パニック2005(時間制限を設けているから)」というように。で、また私のような人間にとって耳の痛いことに、このゲームは回を重ねるごとに得点が上がっていった人が60%だった、ということ。ああ。私は残りの40%に違いない。何度やっても失敗知識から、上位概念を学べそうにもない……と、哀しくなったのでありました。

 詳しくは第4回社会技術シンポジウム論文集 「組織構成員の失敗予知能力を高めるためのソフトウェアの開発 -58-」中尾 政之,飯野 謙次(pdf)をご覧ください。社会技術研究会では、論文集をウェブで公開しているのです(こちら)。私はこの手の論文集の情報はは数千円出さないと入手できない、と思っていたのでこの「太っ腹」ぶりにびっくり。

失敗の予防学―人は、なぜ“同じ間違い”を繰り返すのか

失敗の予防学―人は、なぜ“同じ間違い”を繰り返すのか

*1:中尾先生の講演の内容は、製造業の組織構成員対象に例を挙げているので、ほんの少しだけ身近なものに変えています。