強相関エレクトロニクス・「開拓者」の姿勢

 新しくはてなキーワード強相関電子系を作りました。これを書いていたらクーロン力がないことに気がついたので、ついでにこちらも。

 キーワードにも書いたとおり、普通、金属であれば自由電子があるので電気を通します。それが、電子がぎゅうぎゅうとひしめきあう「強相関電子」になってしまうと、電子の身動きがとれなくなって、電気を通さない「絶縁体」のような状態になってしまうのです。面白いですよねえ。
 でも、ある刺激(外部からの光や磁場など)をきっかけに、あっという間に「電気を流す通常の金属」状態になるのです。このドラマチックな現象を使って新しいエレクトロニクスの研究をされているのが物理工学科の十倉好紀教授ノーベル賞候補にも取り上げられたり、NatureやScienceをはじめとする一流学術誌にもばんばん発表しているスターです。

 Ttime! 21号(2007/10)*1に、工学部の学生広報アシスタントの松本さんが十倉先生のインタビュー&執筆をされています。そのときの松本さんのブログのエントリーはこちら→目指せ!ノーベル賞 - コウガクブログ - 東大工学部・広報アシスタントの日常

 さて、東京大学テクノロジー&サイエンス Vol.1 (Octobe―シーズとニーズをつなぐ技術・科学の研究動向 (1) (日経BPムック)*2にも十倉先生が登場しているのですが、十倉先生の記事はこんな締めくくり方で書かれています。

過去は振り返らないという。昔の研究の話を振り向けると、途端に口数が減る。
一転して、最近の研究の話題になると、声のトーンも上がり、説明にも熱がこもる。
未踏の高峰に挑み続けるチャレンジャーの一面を垣間見た気がした。

 先日大容量HDDの技術の発表で多くのメディアに取り上げられた、電子工学科の大津元一教授にお話を伺ったと書きましたが(こちら)、大津先生もそんな感じでした。先生の若い頃の成果もすごいと思ってお伺いしたのですが「それはもう過去の話」と。フロンティアを走る人たちは、常に「前へ、前へ」進もうと先を見ているのだなと痛感したのでした。格好イイ!

*1:Ttime!は高校・予備校生、その先生方に向けて作成している工学部の広報誌です。

*2:なんだかこの本からの引用ばかりで、どれだけ私がこれに頼りきっているか丸分かりですね。