科学技術リテラシー

  更新に間が空いてしまいまして、すみません。声が出なくなる咳の風邪にやられてしまったのと、あれやこれやでばたばたしておりまして。

 この日、日本学術会議国立教育政策研究所の共同プロジェクトである21世紀の科学技術リテラシー像〜科学技術の智〜プロジェクト、第3回全体会議の講演にお呼ばれして、話をしてきました。……がらがら声で。なんで私なんかにお声がかかったのか、というと「趣向を変えて」とのことらしいです。なるほど納得。こんな私が、講演だなんておこがましいのですが、非常に勉強になりました。工学部の広報の者として。科学技術インタープリターとして。

 テーマは"Science for All Japanese"。科学技術リテラシーが国民すべてに必要かどうか、は人によっていろいろなご意見があるでしょう。でも、私がそのような高尚な話をしても意味がないので、これまでやってきた実践的な「苦闘の履歴」を話しました。講演を聴いている錚々たる顔ぶれに恐れをなして、早足になってしまいました。おかげで質疑応答(というか、活発な議論)の時間がいっぱいとれたということで(おい)。

 毛利衛委員長から私に
「内田さんは、ご自分が研究者側だと思いますか? それとも(科学に)無関心な層に近いと思いますか?」
という質問が。私は、自分自身が理系科目が苦手で、しかも研究者に向いていなくて、ってところが「科学技術インタープリター」としての自分の「売り」かな、と思っていたので
「半分で区切ったら『研究者じゃない側』になると思います」
と答えたんです。
 そしたら、毛利さんに「それは、違います! 内田さんは『サイエンスが面白い』と思っている時点で、確実に研究者側に位置しているんです。ほとんどの人はみーんなサイエンスなんて『面白くなーい』って思ってますよ」と。す、鋭い。確かにまだまだ私の中では大・大勘違いがありました。肝に銘じないと。さすが毛利さん、日本科学未来館の館長として、科学コミュニケーターを養成しているだけのことがありますねー。

 会議の最後には、有馬朗人議長*1の挨拶。
「でもね、本当にサイエンスやりたい人間は、収入があろうがなかろうがやるんですよ。前に僕、小柴さん(ノーベル賞小柴昌俊博士)と『僕ら、どんなに貧乏でもサイエンスやり続けたよな』って話をしたもの」と。そして私に向かって「確かに一番やばいのが工学部ね、中途半端だから」←私が発表で「工学離れ」の話をしたので*2。そうなんです、だからこそ工学部はあの手この手で頑張らないとなーと。

 国際基督教大学教授の北原和夫委員長からは「内田さん、刺激的なご講演をありがとうございました」と。刺激的……刺激的……いろんな意味にとれるけど、前向きに受け取っておきましょ。私の前に、北原先生のご講演があったのですが、このプロジェクトがどれだけ大勢の方が関わって、しかも手弁当状態で熱心に活動しているかよおおおくわかりました。私なんか、経験は浅いものの、これまでの活動でいろんな媒体の端っこを見てきたわけですが*3、そのたびに「みんなの科学リテラシー」につい思うことはあれこれあるわけです。ひよっこながら。でも、このような活動の一端を見せていただいて、実に勉強になりましたし、頑張らないとな、と改めて思いました。

 まずは、自分の「大勘違い」状態をなんとかせねば。このブログを始めるときに、広報室会議で「なるべく科学に疎い者の目線で」みたいな言い方をしたのですが、副広報室長の大久保先生に「それ、ウソじゃん」とニヤっとしながら言われたことを今さらながら思い出します。専門の職業にしている研究者、エンジニアには、科学的センスも知識もダメダメな私ではありますが。「自分はサイエンスが好きなんだ」という自覚を持って活動しないと、「理系ウンチクくん」になってしまいますからねー。自分で書いておいた文章でアレですが、気をつけないと私自身が「理系ウンチクさん」になってしまう!

*1:「末は博士か大臣か」なんて古いコトバがありますが、有馬さんは博士かつ大臣になった方なんですよね〜。

*2:ここ10年で国公立大の学部別志望者数、工学部が半減しているということ。

*3:広報アシスタントのコクブンさん、見てくれてありがと〜→世界一受けたい授業 - コウガクブログ - 東大工学部・広報アシスタントの日常