失われた電子スピンが、実は保存されていたことを発見!!

今日は、6月15日にオンライン公開となったプレスリリースの紹介です。
理化学研究所強相関量子科学グループ杉本 直之特別研究員と東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻永長 直人教授の成果で、
Scienceに掲載となりました。


公開に先立ち、記事化促進のためにプレスリリース、記者会見を
6月12日に、文部科学省の記者会室にておこないました。
 私も初めて、文部科学省の記者会室に入りました。
 受付や、警備がものものしく、ちょっとびっくり・・


永長先生がまとめてくださった内容は、工学部のHPにも掲載していますが、こんな感じ。


従来、半導体中の電子は、電子の軌道運動とスピン運動が影響しあうスピン軌道相互作用の下、固体中の不純物などの衝突によってスピンの向き(スピン情報)が消失してしまうと考えられており、スピントロニクスバイスの実用化への重大な問題でした。
研究チームは、スピン軌道相互作用を一般化された磁場の概念を用いて表現し、スピンに関する保存則を導出しました。この結果、消失した電子スピンの情報は「隠れた保存量」に記録されている可能性があることを見いだしました。これをコンピューターで調べたところ、初めにあったスピン情報は、理論の通りに保存されていることを確認しました。また、このスピン情報はスピン軌道相互作用を弱くすると、穏やかに元のスピンに戻り復元できることも数値的に確認しました。
この成果は、スピントロニクスバイスの実用化のための問題解決につながり、従来のエレクトロニクスの限界を超えた新デバイスの創出につながります。


http://www.t.u-tokyo.ac.jp/epage/release/2012/2012061501.html

本研究については、理研のHP 「60秒でわかるプレスリリース」にも分かりやすく説明されています。
http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2012/120615/index.html
  60秒でわかる、って、なかなかいいフレーズですよね!!


さて、研究の内容もとても面白いのですが、
記者会見のこぼれ話が私にはとても印象的でした。


この研究は、現在は理化学研究所強相関量子科学グループに所属する杉本 直之特別研究員が、
5年ほど前に、ドクターの学生だった頃に計算した結果だったそうです。
初めは、永長先生も信じられなかったとか。
 でも、議論するうちこれは・・という発見を理解されたそう。


手計算で発見、そしてコンピュータ計算で検証。
サイエンス誌に投稿した後、認められるまでに2年かかったそうです。
 

その間に、杉本さんは、法科大学院への進学をされたり、
その研究人生も紆余曲折。
 永長先生の勧めもあって、今は理研で研究を継続しているとのこと。


永長先生は、終始、杉本さんの成果、ということを強調されていたのも記憶に残っています。
研究者として、そして、教育者として・・


基礎研究の幅を広げる先生方もたくさん、工学部にいらっしゃいます。
その成果の積み重ねを大切に伝えたい。
 広報の大事な役目だと思っています。